2010/07/13
まとめの座談会(3)家もキッチンも、使う人を表しているんですね。
建築士・渡部有美子さん
ご参加いただいたのは、おなじみ「Ristorante我が家」主宰の是友麻希さん、建築士チームの渡部有美子さん、岩崎明希子さん、岡田理佳さん、百合本雅子さん、小林美紀子さん、そしてクリナップのキッチンアドバイザー大山百合さんです。

●先輩サロネーゼのキッチンのお悩み
是友 そうですねぇ...私のサロンは賃貸マンションなんですが、月に200人以上が出入りするので、部屋のいろいろなところが壊れていくんですよ。
――壊れていく?(笑)
是友 消耗が早いので、取っ手が取れたり、収納の扉が外れたり(笑)、思いもよらないところが壊れたり、汚れるのも早いです。
スタッフも多いので、収納も置き場所を決めてラベルを張ってあっても、人によって置く場所が微妙に違うので混乱しやすいですね。
――是友さんほどではないにしても、ご自宅サロンをやられる方は、人の出入りが増えて、設備や器具、食器などの消耗が早まることは念頭に置かれたほうがいいかもしれませんね。
是友 ええ。教室運営のための水道代や光熱費は、かなり増えますし。
驚いたのが、人が集まると想像以上にクーラーが効かなくなることでした。冬は人が多ければ暖かくなるからいいですが(笑)、夏はクーラーを相当効かせないといけないので電気代が予想以上にかさみます。
●自分に合ったキッチンとは?サロンとは?
是友 その方の性格にもよると思います。「思い立ったら行動!」というタイプの方は今のままスタートされればいいですし、「背中を押されないとなかなか行動を起こせない」というタイプの方は、使いやすいキッチンをじっくり考えて、リフォームをしてしまって、やらざるを得ない状況に自分の身を置くのもいいでしょう。
――サロンの開業は、自分がどういう人間かを見直すよい機会にもなりそうですね。
是友 そうですね。自分をよく観察して、自分のいいところを自分がまずわかっていないと、サロン運営はうまくいかないかもしれません。
サロンをはじめれば何かが変わる! キッチンを新しくすれば何もかもうまくいく!というわけではありません。サロンや新しくなったキッチンは、自分の生き方を助けてはくれるけれど、自分を変えてくれるわけではありませんからね。
大山 リフォームしても、キッチンの問題がすべてクリアになるわけではありません。
たとえば、キッチンリフォームの際、対面型を希望される方が多いですが、開放感があるということは、壁が少なくなって、その分収納が減るということでもあります。
リフォームはもちろん、改善することのほうが多いですが、使い勝手が変わって一時的にであれ、少し使いづらく感じる点もあるかもしれません。
――たしかにそうですね。
大山 クリナップのシステムキッチンは足元に収納をつけるなど、収納不足を解消する工夫をいろいろしていますが、リフォームで、使い勝手の変化があることはご理解いただければありがたいな、と思います。
●「器替え」のススメ
是友 理想を言えば、持っている食器がいつでも手近にあって、なおかつ見やすく置かれていてほしいのですが、収納は必ず限界があるので、私の場合は季節ごとに総入れ替えをしています。洋服と一緒。衣替えをするように器替えをします。
使うものはキッチンの収納に、それ以外はクローゼットの空きスペースなどに置いています。少し埃をかぶってしまっても、使うときに洗えばいいわけですし。
大山 そうなんですね! 実は今までお客さまのご相談に対応していて、「器類はキッチン以外の場所に置いてもいいかもしれない」と思うことがあって、実際にそうアドバイスさしあげたこともあるんですが、「キッチンアドバイザーなのにキッチン以外のところに」と言っていいものかしら?と迷っていたんです。
サロネーゼとしてご活躍の是友さんが、実践していると聞いて自信がもてました!
渡部 収納って、スペースがあればあるだけ物を詰め込んでしまうものですしね。
少ない収納でも整頓できる人もいるし、たくさん収納があっても散らかる人はいるし。問題は収納の大きさではなく、その人の性質ということでしょうか(笑)。
是友 きれいに収納している方ほど、持ち物が少ないですしね。
――まずは、自分が何を持っているかを把握することが必要なんですね。
渡部 そのためにも器替えはよさそうですね。季節ごとに持ち物を見直せますから。
是友 器替えをすると、「これは使わない」というものが絶対に出てくるはずです。それは処分したり、いいものなら人にあげたり。
――3年着なかった洋服は着ないのと一緒で、3年使わなかった器は使わないですよね。
中国人は中国料理しかつくらないから食器も調理器具も中華用があればいい。ドイツ人のキッチンはきれいとよく言われますけれど、彼らの料理はあまり火を使わないですし、調理がかんたんだから。
一方日本人は、普段から、和食、イタリアン、中華、エスニック...と多種の料理をつくりますから、食器も洋皿からお重まで、調理器具も魚焼き網からダッチオーブンまで、いろいろ揃えなきゃならない。
是友 しかも家は狭くて収納場所も少ないという(笑)。
――いろんな調理器具を使いこなして、四季折々の料理を作る日本の主婦は優秀です。
●無理なく真似できる目標を探す
女の人はお買い物が好きなので、私のサロンで「これ欲しい!」というものを見つけて、食器、調理器具、食材、調味料など、同じものを買うのが楽しいんだそうです。
――生徒さんは、先生の生き方のスタイルを真似したいものなんですね。
サロンも、自分が好きな先生のスタイルの真似からはじめるのもありかもしれません。
是友 自分が無理なく真似できそうな先生を見つけられたら、それがいいと思います。
――たしかに、いくらすてきでも「真似するのは無理」ということはよくあります。調理器具も、他人が使いやすいと言っていても、自分も使いやすいとは限らないですし。
大山 食洗器をビルトインしても「あまり使わない」という方もいらっしゃるし、「食洗器なしでは生活できない」という方もいらっしゃいます。最新の設備が誰にとっても便利とは言いきれないところはたしかにあります。
是友 キッチンの設備も、自分のことをよく知って、自分に合うものを選びたいですね。
――是友さんは「掃除が苦手だから」とよくおっしゃっていましたね(笑)。だから、見せる収納は自分に向かないと冷静に判断されたり、掃除好きのスタッフに手伝ってもらったりと、運用を工夫されています。
是友 掃除もひとりで完ぺきにやってみたこともあったんです。でも案の定、無理が生じて(笑)。結局、自分がやりやすい、身の丈スタイルに落ち着いたという感じでしょうか。
サロネーゼの方のなかには、ちょっと背伸びをする感じがいいし、それが苦にならない方もいらっしゃると思いますから、人それぞれでいいんじゃないでしょうか。
●使う人を表す家、キッチン
たとえば建築士事務所にリフォームのご相談に行って、「家族がくつろげる空間」とお願いするよりも、家族構成やそれぞれの趣味、生活時間...と、具体的な要件を伝えたほうが結果としていいリフォームになるのと同じことだと思います。
是友 リフォームさえすれば、家族がくつろげるようになると思いたいところですが、何をどう改善すれば家族が居心地よく過ごせるかを知っているのは、自分ですからね。
渡部 結局、家もキッチンも使う人を表しているんですよね。
だからこそ建築士としても、依頼者の理想をそのまま実現するだけじゃなく、その人に本当に合ったものを提案してあげることが必要なんだな、と感じました。
――なるほど。いずれにしても、キッチンの問題はひとりで解決するのは難しそう。
岡田 自分のことは、自分では意外と見えないことが多いですから、プロの第三者(キッチンアドバイザー、工務店、建築士など)にキッチンを見てもらうか、現状がわかるような写真なり図面なりを持って相談に行かれるのがいいと思います。
――サロンの場合、すべてが完ぺきな、生活感のない、ショールームやホテルみたいな空間がいいかというと、そうとは限らないんですよね?
是友 ええ、そう思います。生徒さんにとっては、先生のスタイルが感じられるということが一番のはずです。
もちろん、中にはショールームのようにきれいにされている先生もいらっしゃいますが、ショールームのようなスタイルがたまたまその先生に合っているということです。
――是友さんのサロンは「是友ワールド」としか名づけようのない、不思議な、他の人には真似できない空間ですものね。そんな世界観を生徒さんも楽しんでいらっしゃる?
是友 そうだとうれしいですけれど(笑)。
万人受けは無理だと思うんです。サロンをはじめるときは、「生徒さんが集まるかな?」と心配で、レシピもテーブルコーディネートもサイトのデザインも、一般受け路線を選びがちです。でも裏返すと個性がなくなってしまうので、私はおすすめしません。
自分の好きなものを集めて、自分らしさを出せたときにはじめて、「このサロンがいい」「この先生がいい」と選んでくれる生徒さんが定着するのだと思います。
(次回へつづく)
座談会進行=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=窪田みゆき(Dreamia Club)
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是友麻希
これとも まき
「和食料理教室 Ristorante 我が家」主宰
聖心女子大学出身。
国内外からの客人の多い家庭で育ち、幼少より料理に慣れ親しむ。
大学卒業後、「銀座すしもと」にて和食と魚料理の基礎を学ぶ。
2005年に東京・自由が丘の自宅にて家族をもてなすための極上家庭料理教室「Ristorante 我が家」を主宰。2009年3月に教室を中目黒に移し、「和食料理教室 Ristorante 我が家」としてリニューアル。
レストランやカフェのアドバイザーも務めるなど幅広く活動するとともに、家庭で楽しみながら作れるお洒落でおいしいお酒のおつまみ・魚料理を研究。
「焼酎アドバイザー」「野菜ソムリエ」「文部省認定 健康・食育アドバイザー」認定。
ブログ

渡部有美子
わたなべ ゆみこ
ワタナベ一級建築士事務所代表
大学では経済学を専攻、卒業後は住宅建材販売会社に入社。ユーザー直販リフォーム工事部門の開設に携わり、チーフコーディネーターとして在籍する。
二児を出産後、戸建住宅(木造)系及び分譲マンション(RC造)系の設計事務所等で経験を積みながら建築士の資格を取得し、平成2年に建築設計事務所を開設する。
現在は、大型分譲マンションや介護施設の実施設計の経験を生かして、新築戸建住宅の設計やリフォーム工事のコーディネイト等、幅広く手がけている。
一級建築士、宅地建物取引主任者

岩崎明希子
いわさき あきこ
株式会社アトリエ・アルバ代表
1996年に岩崎設計事務所開業、その後 2008年に株式会社アトリエ・アルバ設立。主に住宅設計を手掛ける。風水を学び、「温故知新」を設計理念に、女性の視点で間取りプランからインテリア、照明、外構計画までトータルにコーディネート。
ご要望に合わせた収納の造作、施主支給等、お客様主役の楽しく豊かな家づくり(デザイナーズハウス)を目指している。
デザイン全般を手掛け、Adorno・Alba~アドルノ・アルバ~も経営。
株式会社アトリエ・アルバ 一級建築士事務所
Adorno・Alba ~アドルノ・アルバ~
一級建築士、インテリアコーディネーター、福祉住環境コーディネーター

岡田理佳
おかだ りか
A.O.R一級建築士事務所
茨城大学出身。
建設会社、不動産会社を経て2002年 A.O.R一級建築士事務所設立。
戸建、店舗、事務所建築に携わる。
一級建築士、宅地建物取引主任者、福祉住環境コーディネーター

百合本雅子
ゆりもと まさこ
百合本建築設計 ~matsudo~代表
広島工業大学 工学部建築学科卒業。建築士の父の影響で、幼いころから建築デザインに触れて育つ。建築事務所や住宅系建設会社に勤務し、主に住宅の設計(累計150棟)に携わる。
2002年、父の建築事務所の分室として、「百合本建築設計~matsudo~」を開設。
住宅や店舗の設計に携わる。その後、長男・次男の出産を機に約4年間、育児に専念。 2009年、事務所を再開する。
一級建築士、福祉住環境コーディネーター

小林美紀子
こばやし みきこ
MIKI設計企画代表
不動産建築会社での新築打合せ経験により建築に興味を持ち、独学にて二級建築士資格取得。
「お客様の希望を出来る限り現場に伝えること」を心がけながら経験を重ね、この度建築士事務所開設。たたき上げの建築士目指し、日々勉強中。
二級建築士、アロマテラピー検定1級 ((社)日本アロマ環境協会)

大山百合
おおやま ゆり
クリナップ㈱キッチンアドバイザー
ハウスメーカーのカスタマーリフォーム部門のアシスタントコーディネーターを経てクリナップ(株)へ入社。
新宿ショールームにて、リフォームをご検討中のお客様のご自宅へ伺い、お客様の使い勝手等に合わせたキッチンのご提案をする「ご自宅訪問サービス」を担当。
インテリアコーディネーター キッチンスペシャリスト
カラーコーディネーター「商品色彩」1級





