2009/12/22
キッチン相談室のパネリスト・是友麻希さんはどういう方ですか?
Dreamiaさん
サロネーゼを目指そうという方にも、すでにサロンを開かれているサロネーゼの方にもご利用いただけるこのコーナー。今回から3週にわたり、皆さんからのご相談にアドバイスをいただくパネリストの方々をご紹介します。
はじめにお話を伺うのは酒肴・魚料理研究家の是友麻希さん。中目黒にあるサロン「Ristorante我が家」でのお料理教室を中心に、レストランや各種メディアへのレシピ提供、食器プロデュース、料理ショー(!?)の企画と多彩な活躍をされています。

●料理教室の開業準備で寿司屋に弟子入り!?
――是友さんは以前、会社勤めの激務と接待漬けで身体を壊され、そのとき「家で食べるごはん」に深く癒されたご経験があって。それをきっかけに、「料理の大切さを伝えたい!」と、お教室を始める決意をされたそうですね。「料理教室を始めよう」と思われたとき、いきなりお寿司屋さんに勉強に行かれたのが面白いです。
是友 ええ、「何が起こったの?」って周りもびっくりですよ(笑)。でも私の中では「日本人である以上、日本料理をきちんとやりたい。だから寿司屋」というのが自然でした。 子どもの頃から外国の方と接する機会が多く、海外の方に「日本の料理と言えば?」と聞くと、だいたい寿司、すき焼きなんです。でも、普通の人は寿司は握れませんよね。巻き寿司や飾り寿司だってちゃんと作れない人は多い。それで、まずは日本人として恥ずかしくない程度に日本食を作れるようになろうと思ったんです。
それから、私がやりたかったのは「楽しい料理」。「非日常。だけれど日常」というイメージで、例えば、家庭の日常で寿司を握ることはありませんが、真似事でもいいから少し握ってみたら楽しいんじゃない?という提案がしたくて。
身近にあまりないことをあえて日常に取り込むのが楽しくて好きなんです。
――お寿司屋さんでの修行ってどんなものなんでしょう?
是友 「修行」と言うのはおこがましくて、「寿司屋で学ばせてもらった」と私は思っています。寿司屋は10年20年かけて一人前になれるかどうかという厳しい世界ですから。
具体的には築地市場まで買出しについて行き、魚の目利きを勉強させてもらい、店に帰って魚のウロコをはがしたりさばいたり仕込みをして、カウンターのケースに魚を並べるまでの準備をする。営業時間中は、人が足りなければフロアの手伝いもしました。
お店にははじめから、寿司屋を目指すわけではなく、料理教室をするための勉強をさせてもらいたいと話していました。こちらの意向をわかってもらったうえで仕事をさせてもらったことはとてもありがたいことだと思っています。
●自宅サロンからスタート
――料理教室のスタートは自由が丘のご自宅でした。
是友 もともとオープンキッチンで、人が動きやすいつくりになっていたのでリフォームはせず、ただ、実習スペースがなかったので、オープンキッチンのカウンター側に、キャスターのついた可動式の調理台を2台、教室のある日だけ置くことにしました。
自宅スペースには制限があります。料理教室だけのための設備が、普段は使わないのに場所を取ってしまうのは困りますから、可動式にしておくのがおすすめですね。
それに、教室を始めてすぐは、生徒さんが何人?クラスは週何回?どんな客層?など全くわかりませんし、自分もいつまで続けることができるかわかりません。どんな展開にもフレキシブルに対応できるように、いろんなパターンを考えて、食器やカトラリー、鍋などを準備したほうがいいと思います。
場所や設備に合わせて、教室の進め方を柔軟に変える。あるもので「いかに足らせるか」が知恵の絞りどころですね。
――2009年3月に教室を中目黒に移されますが、それは生徒さんの数が増えすぎてしまったからですね。300人を超えられたとか。
是友 はい、ありがたいことに!
自宅だと家族がいますから、教室の日程を増やすことが難しいんです。クラスを増やすほど、家庭に支障が出てきますから、主人と話し合って「じゃあ教室は別の場所で」と決めました。あとは犬と猫のことも考えて(笑)。教室がある日は別の部屋に閉じ込めていたので、それも気になりましたし。
●伝統を今に取り入れる是友流おもてなし術
――新しいサロンは内装にかなりこだわられています。是友さんの新サロンを取り上げた『お料理教室をはじめたい!』 (成美堂出版)では「昭和モダン」と表現されています。
是友 私は「外国人から見た日本」をテーマにしたつもりなんですけれど(笑)。
今、若い人でちゃんとした和食器をもっている人はすごく少ないし、もっていても箱に入ったままです。食器は割れるものですが、使わないことには意味がありません。宝の持ち腐れにせず、消耗品と思ってどんどん使ってほしいんです。
ただ、高価な食器をそのまま使うと「高級~」な感じがして使いづらいですが、普段使いの洋食器と合わせたり、「ザ・日本」なコーディネートから敢えて外れると面白いですよ。みそ汁をコーヒーカップに入れてみたり、昔からあるものの価値を日常に取り入れるのが好きですね。
和洋折衷、だけどこれは日本料理だよね、っていう料理が作りたいですし、インテリアやテーブルコーディネートも、帯をタペストリー風に壁に掛けたり、五重塔や浮世絵を飾ったり、日本の伝統をもっと気軽に楽しめる料理と空間を目指しています。
――「今」に合った形で伝統を取り入れていらっしゃる。
是友 時代が変化する中でも、日本人はやはり「みそ汁を飲むと落ち着く」んです。どんなに美味しいフレンチやイタリアンも、毎日食べ続けると疲れてしまう。日本の良さを保ちつつ、新しいものを取り入れていきたいです。
――ところで、是友さんは音楽や絵画もお好きだと伺いましたが。
是友 小さい頃から音楽が好きで、青山円形劇場のミュージカルで主演を務めたこともあるんですよ(笑)。
子供の頃はアートの道に進むと思っていて、自分が「食」の道に進むなんて思いもしなかったです。でも、会社勤めを経て今は「食はアート」と思ってこの仕事をやっていますから、結局またアートの道に戻ってきたな、って。今までの経験が全部つながってきているので、「やったことは無駄じゃなかった」とありがたく思っています。
●少し頑張れば真似できそうな「異空間」
――そんな是友さんの新サロン、いちばんのこだわりはどんなところでしょう。
是友 マンションの1室で、40㎡くらいとあまり広くないので、収納がいちばんの問題です。調理器具がとても多いので、これをどううまく収めるかに気を使いました。
動線もポイント。生徒さんでいっぱいなうえにスタッフもいますから、スタッフが(実際には)あまり動かなくても動ける(働ける)、生徒さんもあまり動かなくても実習ができるようなシステムを、スタッフといろいろシミュレートして組み立てました。
新しいサロンは生活をしていない場所なので、レストランにいるような「異空間」をプロデュースできたことも気に入っています。自宅はどんなにきれいにしてもどうしても生活臭が出てしまいますからね。
「異空間」と言いながら、家で真似できないものではありません。料理はもちろん、テーブルコーディネートも部屋の雰囲気も、ちょっと頑張れば真似できそうな感じの「異空間」を目指してます。高価なもので固めるのではなく、手軽なアイテムと合わせて、ご自宅で取り入れてもらうのが目標です。
――「Ristorante我が家」の独特なところは、魚をさばくコースがあることです。
是友 最近、実習形式の料理教室が少なくなっていると聞いていますが、家に帰ったらできないかも?という難しいポイントは必ず実際にやってもらいます。
でも、魚を初めて触る方がいたり、魚は切り身で海を泳いでると思ってる方もいらっしゃっいますからね(笑)。
生徒さんには「1回で全部できるようになろうとしなくていいですよ」と言っています。最終的には全部1人でさばけるようになりますが、まずは魚を触ってみる、撫でてみることからスタートです。
さばく際にかけるバックミュージックも重要で、テンポよく綺麗にさばけるようリズムにのって作業をしていただくので、「魚に触るのが初めてでも怖くない」「さばくのって意外と楽しい!」とご好評いただいてます。
やっぱり料理は楽しくないと! 今も巷には「3分で」とか「簡単に」というレシピが溢れていますが、私はもともと、食べることも飲むことも大好きなので、3分を10分に伸ばしてもっと美味しくなるなら、そのほうが断然いいんです。
それに、料理をしている時間が楽しければ、面倒くさい時間じゃなく、有意義な時間にできるでしょう?
●料理をエンターテインメントに!
――なるほど。料理を楽しむという意味では、11月末から始まった「クッキング・ボーイズ」という舞台も楽しそうな企画です。
是友 俳優の皆さんにステージ上で私が料理をお教えして、その一部始終を公開、しかもお客さん全員が試食できるという舞台です。料理が全然できなかったボーイズが少しずつ成長していく様は、見ている方も一緒に楽しむことができます。
――アイデアが湯水のように湧いてきて、しかも思いついたらすぐに行動に移されますね。
是友 やってみないと始まりませんから(笑)。
料理教室を始めるときも、周りからは「まだ早いんじゃない?」「他人に教えるほど料理できるの?」と言われました。自分で振り返っても、「何も知識のないままよく始めたな」と正直思いますが、始めてみないと何もわからないという思いは今も変わりません。
――今後はどんな計画をお持ちですか?
是友 「料理はエンターテイメント」というコンセプトを軸に、いろいろな形で料理を楽しむ提案をしていきたいと思っています。
お店のプロデュースにも興味があります。世界で日本の料理はとても注目を浴びていて、お寿司屋さんや割烹のカウンターといった「見せる」料理も着目されています。私も「食」にエンターテインメントを取り入れたお店を作りたいと思います。
「キッチンは舞台。奥様は女優」というのが私のもうひとつのテーマでもあるのですが、キッチンに立つ人をきれいに見せる工夫がされていたり、もっと優雅な気持ちで立てるキッチンがあったらいいなと思います!
――今日はありがとうございました。
是友 ありがとうございました。「キッチン相談室」ではサロネーゼの目線で皆さんのご相談にアドバイスができたらなと思っています。よろしくお願いします!
(次回は建築士ユニットの皆さんをご紹介します)
企画編集=深澤真紀(タクト・プランニング)
テキスト=橋中佐和(タクト・プランニング)
写真=窪田みゆき(Dreamia Club)

是友麻希
これとも まき
「和食料理教室 Ristorante 我が家」主宰
聖心女子大学出身。
国内外からの客人の多い家庭で育ち、幼少より料理に慣れ親しむ。
大学卒業後、「銀座すしもと」にて和食と魚料理の基礎を学ぶ。
2005年に東京・自由が丘の自宅にて家族をもてなすための極上家庭料理教室「Ristorante 我が家」を主宰。2009年3月に教室を中目黒に移し、「和食料理教室 Ristorante 我が家」としてリニューアル。
レストランやカフェのアドバイザーも務めるなど幅広く活動するとともに、家庭で楽しみながら作れるお洒落でおいしいお酒のおつまみ・魚料理を研究。
「焼酎アドバイザー」「野菜ソムリエ」「文部省認定 健康・食育アドバイザー」認定。
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